
【ポリタスTV3周年記念特別番組】北海道百年記念塔に見る「セトラー・コロニアリズム(入植植民地主義)
この番組は、2023年6月4日(日)にZAIKOにて配信された【ポリタスTV3周年記念特別番組】北海道百年記念塔に見る「セトラー・コロニアリズム(入植植民地主義)」のアーカイブです。
【番組概要】
皆さんこんにちは。ポリタスTVキャスター/編集長の津田大介です。
2020年6月1日に開局したポリタスTVが2023年6月1日に3周年を迎えます。ここまでの道のりは決して平坦ではなかったですが、現在はオンラインの独立型報道番組として多くの方に認知いただけるようになりました。番組はいまだ十分な黒字化を達成できていませんが、それでも通常回に加えてドキュメンタリー番組をつくったり、海外からの配信を実現したり、皆様のご支援のおかげでいろいろなチャレンジをさせていただいています。今後もアクセス数に囚われず、社会にとって多くの人が知るべき情報をできるだけわかりやすく伝えていけるよう努力を重ねていきます。今後ともご支援のほどよろしくお願いします。
さて、ポリタスTVは3周年を機に新たな挑戦をいくつか始めます。6月1日(木)から番組配信数を増やし、僕以外の方にもMCを担当していただき、より広範囲な話題を扱えるようにします。そんななか、新MCとしてお声がけしている小田原のどかさんより、北海道百年記念塔をめぐる議論をテーマにした番組をつくりたいという提案をいただきました。一般にはなかなか知られていない議論を深掘りし、さらにはアーティストによるライブも組み合わせることで、ポリタスTVらしい特別番組になるのではと思いましたし、何よりメディアとして目指す方向性も強く打ち出せると考えました。ポリタスTVで音楽ライブを有料で配信するのは初めての試みとなりますが、ディスカッションだけでなく、音楽も含めてこの問題にコミットする当事者たちの表現を味わっていただければ幸いです。
【番組内容】
1970年に北海道百年記念事業の一環として北海道札幌市厚別区に建てられた「北海道百年記念塔」の解体が始まり、新たなモニュメントのデザインコンペが進行しています。
セトラー・コロニアリズム(入植植民地主義・定住型植民地主義)の舞台となった北海道に置かれる新たなモニュメントのコンセプトは、「今日の北海道を築きあげてきた先人たちへの感謝と畏敬の念を表すとともに、互いの多様性を認めながら支え合う共生を基礎に、未来へとつながる北海道を象徴する」ものとされています(https://www.pref.hokkaido.lg.jp/fs/7/6/7/7/5/6/4/_/%E3%83%A2%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%87%E3%82%B6%E3%82%A4%E3%83%B3%E5%8B%9F%E9%9B%86%E8%A6%81%E9%A0%85.pdf)。
しかし果たして、「互いの多様性を認めながら支え合う共生」とはどのようなものなのでしょうか。「互い」とは誰と誰を指すのでしょう。
北海道百年記念塔の解体の新たなモニュメントの設置に反対か/賛成かだけではない色々な意見を可視化したい、ひっくり返せる可能性のない記念塔についての意見箱のようなものをつくりたいとマユンキキさんからご連絡をいただいて、私は誰でも意見を投稿し、それを見ることができるウェブサイトと、百年先の人々も読むことができる書籍の制作を提案し、「意見箱プロジェクト」が立ち上がりました。
ポリタスTVでは、様々な専門を持つメンバーとこれまで重ねてきた議論の一旦を公開するとともに、音楽に携わるメンバーを中心に本プロジェクトの楽隊としての展開も示します。
【出演】
浅原裕久(あさはら・ひろひさ)
フリーランスの編集者。書籍や映画のパンフレットなどの編集のほか、web媒体や月刊誌に取材記事を執筆。近年の主な仕事に写真集『AINU』(池田宏)、池田宏写真展「現代アイヌの肖像」図録、『シヌイェから見るアイヌの生活3』(八谷麻衣)、映画『クリード過去の逆襲』パンフレットなどがある。
田村かのこ(たむら・かのこ)
ArtTranslatorsCollective代表。アートトランスレーターとして、日英の通訳・翻訳、コミュニケーションデザインなど幅広く活動。人と文化と言葉の間に立つ媒介者の視点で翻訳の可能性を探りながら、それぞれの場と内容に応じたクリエイティブな対話のあり方を提案している。非常勤講師を務める東京藝術大学大学院美術研究科グローバルアートプラクティス専攻では、アーティストのための英語とコミュニケーションの授業を担当。また札幌国際芸術祭2020では、コミュニケーションデザインディレクターとして、展覧会と観客をつなぐメディエーションを実践した。NPO法人芸術公社所属。表現の現場調査団メンバー。
廣瀬拓音(ひろせ・たくと)
昭和56年岐阜県出身、東京在住のミュージシャン。バンド「キウイとパパイヤ、マンゴーズ」、ブラジル打楽器楽団「BAQUEBA」主宰。それぞれベースやブラジル打楽器を担当。作曲家として映画、TV、ラジオやウェブ媒体などの音楽制作も行う。マユンキキとは2012年にオーストリアの音楽フェスで出会ったことがきっかけで彼女のソロ活動のサポートミュージシャンをつとめ、ユニット「アペトゥンぺとパパイヤ、マンゴーズ」として昨年夏にコンセプチュアル・アイヌ語シティ・ポップ『KOMPUSATKEMENOKO(昆布干し女)』をリリース。
マユンキキ MAYUNKIKI
1982年生まれ。北海道出身・在住。アイヌの伝統歌を歌う「マレウレウ」「アペトゥンペ」のメンバー。2021年よりソロ活動開始。音楽分野だけでなく国内外のアートフェスティバルに参加。アイヌ語講師、札幌国際芸術祭(SIAF)2017バンドメンバー(企画チーム)、SIAF2020ではアイヌ文化コーディネーターをつとめる。2018年より、自身のルーツと美意識に纏わる興味・関心からアイヌの伝統的な文身「シヌイェ」の研究を開始。現代におけるアイヌの存在を、あくまで個人としての観点から探求し、表現している。2020年には第22回シドニー・ビエンナーレ「NIRIN」に参加。同年、写真家の池田宏と「シヌイェアイヌ女性の入墨を巡るプロジェクト」(北海道・白老)、2021年「シンリッアイヌ女性のルーツを探る出発展」(北海道・札幌、CAI03)、Reborn-ArtFestival2021-22[前期](宮城県・石巻)、2022年「Siknure–Letmelive」(イギリス・バーミンガム、Ikongallery)。
山川冬樹(やまかわ・ふゆき)
美術家/ホーメイ歌手。現代美術、音楽、舞台芸術の境界を超えて活動。己の身体をテクノロジーによって音や光に拡張するパフォーマンスや、南シベリアの伝統歌唱「ホーメイ」を得意とし、これまでに16カ国で公演を行う。現代美術の分野では『TheVoice-over』(1997~2008)等の作品を発表。ハンセン病療養所(大島青松園)や帰還困難区域(グランギニョル未来のメンバーとして/Don’tFollowTheWind展)での長期的な取り組みもある。
山田大揮(やまだ・ひろき)
インストーラー、テクニカルコーディネーター。さっぽろ天神山アートスタジオを経て、札幌文化芸術交流センターSCARTSで展覧会・舞台公演のテクニカルマネジメントを担当するほか、美術館やギャラリー、芸術祭やオルタナティヴスペースでの展覧会制作に携わる。アーティストとしての活動に「竣工50年北海道百年記念塔展井口健と『塔を下から組む』」(市立小樽文学館、小樽、2020年)など。1994年北海道生まれ。
渡部宏樹(わたべ・こうき)
筑波大学助教。南カリフォルニア大学映画芸術研究科より映画メディア学のPh.D.を取得後現職。表象文化、映画、ポピュラー文化、ファン文化、日系アメリカ人の文化史等を具体的な対象として、資本主義社会における文化・芸術と市民社会について研究している。
[司会]
小田原のどか(おだわら・のどか)
彫刻家、評論家、出版社代表。芸術学博士(筑波大学)。1985年宮城県生、東京都在住。単著に『近代を彫刻/超克する』(講談社、2021年)。共著に『吉本隆明:没後10年、激動の時代に思考し続けるために』『7・8元首相銃撃事件:何が終わり、何が始まったのか?』(いずれも河出書房新社、2022年)など。主な展覧会に「近代を彫刻/超克する−雪国青森編」(個展、国際芸術センター青森、2021年)「あいちトリエンナーレ2019」など。
※今回の番組はポリタスTVとのりこえねっととのクロスオーバー企画です。ポリタスTV収録後のアフタートークをのりこえねっとのYouTubeチャンネルでご覧いただくことができます。